2011年02月16日

日本の木造建築は、本当に進化しているのか?

今回、八丈島で評価する不動産は、シロアリの被害を受けていました。

築後10年程度で被害を受け、猛烈な速度でボロボロになっている姿を見て、戦慄を覚えると同時に、ふとした疑問が、私のなかに浮かんできました。

かつての建物も、同じように被害を受けていたのだろうか?と…

このことを、同行した調査担当の人に話すと、「昔はシロアリいなかったんじゃないですか?」

一瞬納得してしまいました(笑)が、どうも、そういうことではないようです。

滞在の最終日、船が欠航になったおかげで、期せずして得た観光の機会。

島のふるさと村で、築140年の古民家を訪問した際、囲炉裏の火を囲みながら、オバアと話した事をきっかけに、いろいろなことが分かってきました。

この国の建築のありかたにまで関わる、深い深い話です。(深イイ話ではありません…)



築140年のその古民家にはシロアリの被害は出ていないそうです。

オバアの一人の自宅では、古い部分ではなく、新しく増築した部分にシロアリの被害が出て、取り壊しと再築を余儀なくされたそうです。

どうして新しく増築した部分や、新しく建てられた家に被害が出て、古い部分には被害が出ないのでしょうか?

その秘密の一つが、写真のような「石場建て」構造にあるみたいです。

石場建ては、地盤に石を並べた上に直接柱を置く工法です。

軒の深い屋根と、地盤上の石に守られた柱は、湿気を帯びることがほとんどありません。年中干されているような感じです。

事実、私が訪れた日も、斜めに大雨が降っていたのですが、屋敷の柱は濡れた様子がありませんでした。

シロアリは人間みたいな生き物で、集団で高度な社会活動をする一方、単体としての生命力ではひ弱なところがあって、温度や湿度などの環境が整っていないと、活動できず、風も苦手にしているみたいです。

こういった、開放的な床下は、乾燥してよく風が通り、鳥とか蜘蛛とか肉食の小動物がたくさん棲息しているし、人の目によってアリの活動も監視されているので、シロアリにとっては大変住みにくい環境でした。

また、シロアリ対処の要点である
・アリ道を早く発見できる
・床下に簡単にもぐれる
・アリの繁殖に不適切な環境

などを網羅していることを考えると、日本の伝統建築は夏を旨とするというより、もともとシロアリを意識した構造になっているようにも感じられます。



現代住宅は、そういった過去の知恵をかなぐり捨てて、近視眼的な合理性を追求してきました。

基本的にこの島に、何も知らない本土の住宅業者を連れてきて、現代建築を行うと、悲惨な結果が待っています。

あっというまにシロアリの餌食となってしまい、写真のような状態になってしまいます。夜中、シロアリがボリボリ家をかじっている音が聞こえてきて、頭がおかしくなるそうです(怖っ)

コンクリートの基礎を築いて、他の虫が一切入ってこれない空間を作ると、木を食べて生活することができる特殊能力を持つシロアリの独壇場を提供してしまいます。

ブラジルのセラードに住むシロアリも、他の生物が生きていけない厳しい乾季に、枯れ葉を食べることで草原の主になることができた訳ですが、コンクリート基礎は、ミニ・セラードを提供するという訳です。

まあ、一応ベタ基礎は、固いからシロアリを防げるということになっているようですが、それも基本的には期限付き。

コンクリートはひび割れと無縁でいることはできません。

地震派を吸収したり、鉄筋の酸化が進むなかで、必ずひび割れが生じてきます。

建築時にジャンカがなくたって、時間が経ってある程度ひび割れてしまえば、シロアリの道が出来るのは、もはや時間の問題です。



本当は、現代建築は、こういった「石場建て」のような構造・工法を活かして発展すべきであったのではないのか?

にも関わらず、現状ではコンクリートの布基礎かベタ基礎に、横向きに土台を使い、ANCHOR BOLTやらHOLD DOWN金物で土台やら柱をコンクリートに緊結するという、西洋猿真似のドン臭いやり方が取られています。

国交省によって、木造の新築工事について、こうしたやり方が義務付けられている、といったところでしょうか?

地震に対する耐震性にこだわるあまりの行動なのでしょうが、防火耐火にこだわるあまり、アスベストがもてはやされた、いつか来た道のような気がしないでもありません。

新築時に耐震性が確保されていたって、シロアリでボロボロになってしまうようでは、何の意味もない。

国交省さん…島の現状をもうちょっとよく見てみたら?

地面に建物を緊結しない「石場建て」は、地震の揺れによって構造崩壊しにくいので、中途半端な近代住宅よりも、それなりに安全性があり、伝統建築には、ヌキ構造のような非常に合理的な制振構造があることも知られています。

石場建てで、耐震性を確認する手法は、現在古民家で開発・確立されている訳ですから、同様に新築でもそのような構造に対して建築確認を下ろす方法を検討してもらいたいものですネ…



帰りの飛行機の中で、しばらく夕暮れ時の黒い島影を見ながら、短い滞在の事などをぼんやりと考えていましたが、高度があがって雲間に消えたあとはもう島の姿を見ることはありませんでした。

地熱発電所も見たし、植物園の散策も、釣りもできたし(釣れんかったけど)、温泉も入れた。
な訳で全体に楽しいトリップでした (^^)v

そうそう、古民家では、八丈太鼓を叩かせてもらい、いい記念になりました。多謝
posted by RON at 02:47| 知られざる不動産の知識